2009年05月24日

メキシコからの手紙 A(H1N1)新型インフルエンザ

知人を通して、メキシコ留学中の日本人学生とメール交換することができました。私が質問し回答してもらう形にしました。5月5日に質問し5月中旬に回答が来ました。メキシコだけ死亡率が高いことが疑問となっていますが、ひとつの回答となるかもしれません。以下にメキシコからのメールを一部抜粋して掲載します。ちょっと長くなって申し訳ないのですが、興味ある方はお読みください。

☆メキシコからの手紙 A(H1N1)新型インフルエンザについて

メキシコにいる長坂(仮名)です。忙しくて藤井さんの質問への回答が遅れて申し訳ありません。あまり正確なことは言えませんが、自分が周りから聞いた範囲での答えたいと思います。

質問 メキシコシティで医療保険に入っている人は何%ぐらいいるのですか。

回答 メキシコシティの医療保険への加入者は分からないのですが、メキシコ全土では2003年の調査で42.62%が加入しています。この医療保険は雇用従事者と学生(大学生まで)に加入する権利がある保険で、政府、企業、雇用従事者がお金を出しあう形をとっています。企業が加入義務を果たしていない労働者、農民、自営業者、インフォーマルセクター従事者が入れる任意の社会保険(保険料が高い)は全体の0.31%しか加入していず機能を果たしていません。
これらの社会保険に入っておけば、メキシコの公立病院でほぼ無料で治療が受けられ、薬代もほぼただです。しかしこれらの公立病院は満足のいく設備をもたず、薬の在庫も十分でなく、待ち時間もすごく長いと聞きます。自分もバスで病院の前を通ったりするのですが外まで人が並んでいるのを見ます。民間の病院はそれとは違い充実した設備を備えているといわれますが、自由診療で社会保険は一切適用されず、治療費は高くつくため富裕層しか行けないといわれています。社会保険非適用者は病院に一切かかれないかというとそうではなく、メキシコ保健省がやっている医療扶助サービスがあるそうです。
医療費は所得によって免除されますが、医療扶助サービスのための専用の病院に行かなければなりません。この病院は上記の公立病院よりも劣悪で、待ち時間が極めて長いことや、薬の在庫はほとんどなく手に入らないと言われています。また数もすくなく、農村部ではこの制度にアクセスするのがさらに困難だといわれています。

質問 そもそも風邪やインフルエンザで医者に行く習慣はあるのですか。

回答 さらに問題は公立病院に行っても、重症でないと家で安静にしろとしか言われない場合が多く、症状が重くなければ病院にいかないことです。メキシコでは風邪やただのインフルエンザの症状で病院にかかることはまずないし、そのための医者もいないと現地の人はいいます。
症状が重くない疾患や怪我の場合、多くの貧困層はドラッグストアが運営する低額の医療相談所(若手の医者が副収入を得るため働いている)に行き、ドラッグストアの市販薬を買って治そうとするそうです。

質問 当初 新型インフルエンザのメキシコの感染者で重症例に若者が多いということが問題になりました(現在は死因を精査し、若者が多いという認識は修正されつつあるようですが)季節性インフルエンザでは老人や幼少の重症例が多いので、疑問が生じています。
私(藤井)は重症例は別としても、感染者としてカウントされている人の中に若者が多いのは、人口構成が影響しているのではと考えています。未確認情報ではメキシコ国民の50%が15歳以下という話もあります。人口の中の若者の比率が圧倒的だから、若者に感染者が多いのではと考えています(あくまで5月5日時点の推測です)感染者で重症例に若者が多いといのは何が原因と思われますか。またメキシコの人口構成はどうなっていますか。

注釈 日本でも高校生の感染が多いのですが、その事実がウイルスの特性に基づくのかそうでないのかが医学的疫学的にはっきりすれば、対処法に大きな違いが出てきます。例えば老人に感染の危険が少ないなら感染地域でも、高齢者向けのディケアが継続できるし、老人施設の運営も平常どおりできるようになります。

回答 メキシコの若年人口の比率は分かりませんが2000年で0から14歳で34%を占め15から65歳で61%だそうなのでかなり高いと思います。特に今回メキシコシティの郊外地区に住む人が多く感染しているといわれています。この郊外地区は一般に貧困地区と言われ地方から流入した人々が住んでいて若者の割合かなり多いです。またメキシコ全土の集計よりも明らかにメキシコシティは若年層の割合は高いです。そう考えるとその推測には一理あると思います。

質問 若者に重症例が多いのはエイズがメキシコシティで流行っていることと関係しているのではという記事が朝日新聞で4月末に出ています。エイズにかかると免疫力が極度に低下し他の病気が重症化しやすくなります。エイズはメキシコシティの若者の間で流行っているのでしょうか。

回答 エイズがはやっているかどうか詳しい統計をみていないので分かりませんが、学校の教員は流行していると断言していました。その理由として、エイズ自体が同性愛者、バイセクシャルの人の病気だとみなされていて、ホモフォビアの強い土壌のため、感染が分かっていてもできるだけ感染している事実を隠そうとするため、パートナーや昔のパートナーから感染が拡大していっているそうです。有名人が感染して、それが原因で死んでも、癌で死んだと発表する場合が多々あるそうです。

注釈 ホモフォビアとは同性愛または同性愛者に対する不合理な恐怖感・嫌悪感・拒絶・偏見のこと。男性同性愛に対するものが多い。
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