お母さんの紹介で10代後半の少女が来院されました。○○年1月のことです。手足が冷えるという訴えでした。2月からは花粉症にも苦しめられますが、首や肩のこりはありません。
じつは関西人なら知らない人はいない有名な音楽学校を少女は目指していました。そのため毎日 歌や踊りのレッスン漬けの日々。「食欲はありすぎる」との訴えですが、圧倒的な運動量の中で太らないように食事制限をしていますから、当たり前です。治療する側としてはもっと食べて欲しいのですが、そういう訳にもいきません。寝つきも悪く、ぐっすり眠った気がしません。
ストレスと受験のプレッシャーで身体がいつも緊張した状態になっています。いわゆる交感神経優位の状態、リラックスしていい時にもリラックスできないのです。中医学では肝欝気滞(かんうつきたい)と呼びます。緊張とリラックスがうまく切り替えられるようにしていきます。
手足が冷えるといっても身体に熱がないわけではありません。交感神経優位では細かな血流がうまく流れなくなります。中医学では気が滞っていると考えます。肩こり首コリがあってもおかしくないのですが、毎日 踊っているので肩はこりません。
一度 治療すると寝つきがよくなり、よく眠れるようになりました。足の冷えも1ヶ月に5回 治療したところなくなりました。じつは4回目までは徐々に良くなっていたのですが5回目に治療法をかえたところ劇的に改善しました。
足の指先全部に紙をおいて上から直接 お灸するというやり方です。跡は残りませんがチクッと痛いので控えていたのです。刺激の少ない治療からはじめ、効果がいまひとつの時は刺激の強い治療も試みます。もちろん患者さんと相談しながらです。今回も冷えがなくなったので2回で足の指先への灸はやめました。
2月になり花粉症の季節となりましたが花粉症の発症もありません。当初よりあった足首の痛みがレッスンを続けても再発しなくなったのを確認して治療を終了しました。2ヶ月 9回で治療を終わり、まずは歌と踊りに集中してもらうことにしました。
◆アンケート回答
非常によい効果があった。ほとんど完全になおり苦痛がない、総合的にいって治療前の苦痛を10とすれば今の苦痛は0であるという回答があり以下のようにコメントされました。
手足の冷えも改善され、身体も動きやすくなったので踊りが軽くなりました。顔もしゅっとしました。声も出やすくなり声楽の先生にもほめられるようになりました。もっと良くなるように続けていきたいです。
※「しゅっとする」とは大阪弁でかっこいいことです。今回は顔がしまって輪郭がはっきりしたことを表現しています。
◆自筆のコメントはこちらから

◆考察
「顔もしゅっとしました」と書かれていますが美容鍼をしたわけではありません。気をめぐらしただけで変化しました。「声も出やすくなり」と書かれていますが、とくに意識して治療したわけでもありません。少女から歌う時に「声が出にくい」という訴えは一度もありませんでした。無用な緊張がなくなり声ののびがよくなったので、今まで声が出にくかったのだと気がつかれたのでしょう。過度の緊張とストレスがいくところまでいくと失声症になります。声が出なくなったり、かすれた声しか出なくなります。私は失声症も多数 治しています。
※治療例は個人情報保護の観点から、患者さんの年齢、状況を大勢に影響ない範囲で少し変えている場合があります。ご了承ください。