アメリカ国立医学図書館の医学データベース「パブメド(Pubmed)」に収録されているイギリス・ヨーク大学のマクファーソン教授を中心とした研究チームの論文「慢性痛とウツ病のプライマリケアにおける鍼:研究プログラム」は2017年1月30日に発表されています。
Acupuncture for chronic pain and depression in primary care: a programme of research.
MacPherson et al.
Southampton (UK): NIHR Journals Library; 2017 Jan.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/28121095
※「パブメド(Pubmed)」には2016年1月に私と日大の酒谷教授の共同研究!「不安レベルへの鍼の効果と前頭前野皮質のNIRS活動計測」も収録されています。
☆うつ病患者への鍼治療のランダム化比較試験(RCT)で、鍼が深刻なうつ病の症状を減少させることを発見した
イギリス・ヨーク大学の研究チームは、鍼治療を加えると、慢性痛やうつ病に対して、一般治療の効果を促進させることを発見した。
鍼研究の教授でイギリスとアメリカの研究チームといっしょに仕事をしているマクファーソン教授は、一般的な治療を受けている患者群と鍼治療を追加で受けている患者群を対象に研究した。
一般的な治療だけ受けている患者群と比較すると、鍼を加えた場合、明らかに、頭痛や片頭痛の発作を減らし、頸部痛や腰痛を減らした。鍼は、抗炎症剤、鎮痛剤で治療されても痛みがとれなかった変形性関節症の疼痛と機能障害も減らす事を示した。
鍼またはカウンセリングを、抗うつ薬などの薬物療法と比較した新しい臨床試験もおこなった。
北イングランドの755人のうつ病の患者に対し鍼とカウンセリングが、深刻なうつ病の症状を減少させ、治療から1年後もその効果が続いていることを発見した。
鍼をすることができる患者には鍼が効果的だった。何らかの理由から鍼をできない患者にはカウンセリングが効果的だった。鍼もカウンセリングも費用対効果が高い。
「うつ病の治療では、普通は、抗うつ薬を用いる。けど、それは、患者の半分以上に、効かないんだよ。」「鍼の臨床効果の一部には、プラセボ効果もあるかも知れない。でもこの研究は、鍼が慢性痛を減らし、プラセボ鍼よりも効果があるという明確な証拠を示している。」とマクファーソン教授は語る。
マクファーソン教授は続ける。「われわれの新しい研究結果は、慢性痛とうつ病の治療を新しいステップに進めるものだ。なぜなら、患者と専門家は、鍼をもっと自信をもって選択することができる。鍼は、ほかの治療と比べて費用対効果が良いだけじゃなくて、望ましくない副作用を起こす薬を減らして、疼痛や抑うつ気分を減らすことができるんだよ。」
この論文の意図としては以下のように書かれていました。
近年、鍼治療の利用が増加しているが、そのエビデンス(証拠)は確立されていない。臨床効果と費用対効果がはっきりしていない。エビデンスを確立させることで、より多数の患者が鍼治療を利用できるようになるし、政策立案者や意思決定者が鍼治療を政策的に採用していく参考になる。そのためにうつ病の鍼治療のランダム化比較試験(RCT)を行った。
