私も2009年発行の著書「灸法実践マニュアル」の中で「腰痛を伴う心身症」という項目を設けて同様の考えを書いています。「全ての慢性腰痛は心身症である」と。
☆いろいろある『身体表現性障害』の痛みや違和感
著書で取り上げた福島県立医科大学医学部整形外科の先生方も同様の見解で、この記事でも取り上げられています。一部を下記に要約します(要約部分には◆をつけます。私の見解には☆をつけます。)
◆老若男女、多くの人を苦しめている腰痛。そのうちの85%は痛みの原因が分からず、診断がつけられない。どこで診てもらっても、何をしても消えない痛みには、「心」が関係している可能性があることが、近年の研究で分かってきた。
福島県立医科大学医学部整形外科学講座の大谷晃司教授によると
「1つはストレスによって、痛みをコントロールする脳のメカニズムがうまく働かなくなっている場合です。実際よりも痛く感じたり、痛みのもとは消えているのにまだ痛いと神経回路が錯覚したりします。もう1つは、ストレスが体の痛みとして出る場合。仮病ではなく、本人は本当に腰が痛いと感じています。この状態を専門用語で『身体表現性障害』といいます」
☆藤井が日々の臨床の中で、感じていることと同じです。『身体表現性障害』は腰痛に限りません。首の痛み、肩の痛み、顔の痛みといろいろ多彩です。痛みだけでなく違和感とかもやもやとかいろんな形で表現されます。鍼灸のうつ病や双極性障害、パニック障害の治療法を応用しながら治していくと、きれいに治ります。何よりも患者さんを安心させる治療家の姿勢が大切です。
じつは医者や治療家から「治りにくい」「難治性腰痛」とか、治りにくそうな病名、例えば「変形性脊椎症」「腰椎すべり症」とか言われると『身体表現性障害』はますますひどくなります。病名が正しければそれでいいのでしょうか。何か配慮がほしいところです。
福島県立医科大学では抗うつ剤を使うので、「私はうつ病ではない!」という患者さんの心理的抵抗がおこるかもしれませんが、鍼灸では鍼を使うだけなので心理的抵抗はおこりません。
◆いまできること――具体的には「動く」ことだ。最近の医学の常識では、急性・慢性にかかわらず、動いた方が腰痛の治りは早くなるという。
福島県立医科大学医学部整形外科学講座の大谷晃司教授によると
「痛いからじっとしているのではなく、痛くても動けるなら動く。これによって、乱れた脳のメカニズムが正常に整う可能性がありますし、腰回りの筋肉がほぐれて血行が良くなり、結果的に痛みの原因が改善されることも期待できます。そうした運動療法と並行して、患者さんに合わせて痛みを軽くする薬や抗うつ薬などによる治療を行っていきます」
☆結(ゆい)ではまずあらかたの痛みを鍼灸で治してから、動いてもらいます。数回であらかたの痛みはとれます。
痛みで長く安静にしてきたのですから、筋力は弱っています。楽になって動き回ると、衰えていた筋肉が痛みます。患者さんは不安になって「大丈夫ですか?」と聞かれるのですが、私はニコッと笑って「大丈夫です、これは回復に向かう途中に出る痛みですからいい痛みです。そのまま無理のない程度に動いてください」と励まします。再発した痛みも1〜2回の鍼灸治療でなくなります。そのうち筋力も回復してきて、たくさん動いても大丈夫になります。腰痛のせいで掃除ができていなかったお家が多いので、家の中がピカピカになります。
このブログの読者には若い鍼灸師の先生も多数いらっしゃいます。どうか「あなたは治りにくい」と患者さんに責任を押し付ける治療家だけにはならないでください。治せないのは、私たち治療家の責任、技量の不足です。
◆原因の多くは心理的ストレス…腰痛は“気”で治す病だった
日刊ゲンダイDIGITAL 2016年3月23日
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