管針法の横刺はどのようにするのが適切かという議論。私は横刺の時は針管を使わないので、そもそも議論の枠の外にいました。
管針法以外ということで、撚針法での私の横刺のやり方を披露することになったのですが、ちょっと不思議なことがおきました。
5番2寸の鍼を2人の会員のモデル患者さんの背中に横刺しようとしたのですが、斜刺になってしまうのです。皮膚にそって平行に入れるつもりが、斜めになってしまいます。頭は横刺を意識しているのですが、手が勝手に斜刺にしてしまいます。かなり意識して横刺にしてみて、理由がわかりました。横刺だと鍼先の感触がスカスカで、得気がえられません。そしてそんな無駄な鍼をうつと嫌な感覚にとらわれてしまうのです。
長年の治療経験の中で、直感が養われていて、その直感に逆らって鍼をすることに身体が抵抗するようになっているようです。
この間 3年ほど短期ですが鍼灸学校の教員をやるようになって思ったことあります。学生たちは私が診ている患者さんたちに比べ、みな健康です。健康な人たちの間で、必要のない無駄な鍼を練習でうちあうのですから、自然と軽い刺激が好まれるようになります。
しかし実際の患者さんたちは違います。的確に早期に治すためには、どのような刺激が必要か。強い刺激が必要なこともあるのです。病んでいる身体はそれを嫌な痛みとは感じません。
患者さんたちは治ってくると「鍼がいつもより痛く感じる」と言われることがあります。鍼を受けている患者さんの様子で察することもあります。それまで「いた気持ちいい」「ズンとくる感じが気持ちいい」という感覚だったのが、変化してきます。私は鍼をより細いものに変更して「治ってきた証拠です。よかったですね。」と言います。治っていかれる姿をみるのは本当に嬉しいものです。臨床で鍼をする時も気力がみなぎります。そして研究会や講演会で、健康なモデル患者さんに無駄な鍼をするのは実をいうと苦手です。
写真は結鍼灸院の玄関です。