現代医学の分野で腰痛についての考え方が大きくかわりつつあります。2008年1月の関西中医鍼灸研究会で早川敏弘会員(天津中医薬大学準教授)が報告してくれました。
一般の方向けに要約すると、
◆現在は「腰痛」「腰椎椎間板ヘルニア」の概念が大きくかわりつつある。
◆腰痛の原因として心理・社会的要因の要素が大きく注目されている。ストレスによる心身症として腰痛を考えることが多くなっている。
◆腰椎椎間板ヘルニアがあってもそれが痛みの原因とは限らない。
ストレスによる心身症だけでなく、梨状筋(りじょうきん)症候群など、筋肉・関節のトラブルが腰痛や下肢の痛みの原因である可能性が高い。(梨状筋とはお尻にある筋肉の呼び名です)
といったことになります。腰椎椎間板ヘルニアでも特殊な場合をのぞき、医師が手術を積極的に勧めることはまずなくなりました。
☆ 画像だけでは痛みの原因はわからない
「腰椎(腰の骨)に明らかな異常がなくても痛みは生じます」と福島県立医科大学医学部整形外科の紺野愼一准教授は新聞記事等で発言されています。
紺野准教授によると
外来の腰痛患者の約7割はMRIなどで検査しても異常が見つからない。異常が見つかった約3割についても「そこが痛みの原因であるとも限らないのです。画像だけでは痛みの原因はわからない。これが新しい常識です」とのこと。
日本整形外科学会の腰椎椎間板ヘルニアについてのパンフレットにも「MRI画像で椎間板が膨らみだしていても、症状がなければ多くの場合問題はありません」と明記されています。
紺野准教授は患者さんの腰痛に心身症の要素が大きいとなると、精神科、心療内科と連携して治療されています。日本の整形外科の腰痛治療の新しい流れです。(5月8日へ続く)
※専門家、鍼灸学校学生の方は、福島県立医科大学教授の菊池臣一先生の『腰痛をめぐる常識の嘘』(金原出版)を読まれることをお勧めします。菊池先生は腰痛の世界的権威であるカナダのイアン・マックナブ教授に師事。日本整形外科学会の会長を務めた経験もあります。象牙の塔にこもっている方ではありません。「この本の内容はある意味では一臨床家の腰痛研究の足跡かもしれません」と序文にあります。臨床での疑問を大切にされている姿勢には好感がもてます。お父様はなんと「ほねつぎ」、柔整師でした。
2008年05月12日
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